地元の悲願を土足で踏みにじる
美佐島駅罵倒事件

北越急行ほくほく線に「美佐島」という駅がある。
この駅は無人駅で、トンネルの中にあるという大変珍しい駅だ。
アーケードゲーム「電車でGO」でも採用された路線なので知っている方も多いだろう。
こんな珍しい駅であれば、鉄オタとしては興味がそそるところ、是非行って見たいところだ。
そんな駅に、珍しく木村裕子が仕事でもないので訪れたのだ。
しかしそのきっかけは、新潟のホテルイベントで営業の仕事があり(そのホテルで同日に開催されたファミリー向けイベントは軒並み満員御礼の中、木村裕子のイベントは前日でも「あと○室限り」という表示すらされなかった事は割愛するが)そのついでに、しかも自発的ではなく鉄道ライターの横見浩彦にそそのかされて行っただけだった。
自らの興味や探求で行った訳ではないので、全く下調べもしていなかったようである。
そして木村裕子がここの駅で述べた感想がこうだ。

「女一人で来る所じゃねー」

美佐島駅
たしかにこの駅、地下で無人、しかも列車通過時には風圧でお化けが出る時のような音がすることは事実だ。
だがこの地域は2004年と2007年の二度の新潟県中越地震で被害にあった被災地、当然、美佐島駅も地震の被害を受けて2週間近く運休になっている。
大きな被害を受けて連日報道された小千谷市と美佐島駅はわずか20km、新幹線運行以来初の脱線事故となった上越新幹線とき325号脱線現場からも30km程しか離れていないのだから、ほくほく線もどれほどの被害を受けたのか想像がつくだろう。
北越急行のホームページで復興へのドキュメントが掲載されている。
http://www.hokuhoku.co.jp/hakase/4hakase/01-10/bangai.html
当然、この地域の温泉宿などはキャンセルも相次ぎ、観光産業は大打撃を受けた。
そのため、一人でも多くの方に訪れてもらおうと様々なキャンペーンなどもしているが、なかなか地震前の状況を取り戻す事は難しいのである。
そんな地元の方が一丸となって、観光客誘致に力を入れているところに行って、天下の鉄道アイドルのコメントが「女一人で来るところじゃねー」なのだ。
その路線のよさ、駅の風情を伝え、一人でも多くの人に来てもらおうという気持ちなどまるで無い。
何も鉄道に関する知識などいらない、素直に鉄道がすきという気持ちがあるのなら、自分なりの視点でレポートすればいいのだ。
しかし木村は自分を売り込む出汁に鉄道を使っただけで、根っから好きではないので、良さを伝えるという事が出来ないのだろう。

そもそも、この美佐島駅のある赤倉トンネルは全長10,472mあり、JRを除く山岳鉄道トンネルとしては日本最長。
これだけでも十分、鉄道ファンなら興味対象であり、ネタの宝庫。
かくゆう私も、開業後にわざわざ乗りに行ったものである。
しかも特急一往復と各駅停車で一往復。
まずは特急車両を満喫、続いて各駅停車で各駅を満喫したいからだ。

地元にとってもこのほくほく線は悲願だった。
その事が旧松代町(現在の十日町市)広報誌からも伺える。
昭和47年12月10日号にはこのように書かれている。
http://www.city.tokamachi.niigata.jp/site/kyusityousonkohoshi/page_matsudai/pdf/md_1972_12.pdf
「北越北線が完成いたしますと東京への日帰りも夢でなく、出稼のみなさんも週末には帰省できるようになるのでばないでしようか。また、物資の輸送が可能になりますといろいろの産業が発展し出稼しなくてもよいかもしれません。青年も町に帰り過疎もなくなり昔どおりの賑いを見せるかもしれません。この鉄道の開通はいろいろの町発展の大きな役割の一つをしめることになり、その完成が待たれます。」
それから25年後、開業を祝う声がこれだ。
http://www.city.tokamachi.niigata.jp/site/kyusityousonkohoshi/page_matsudai/pdf/md_1997_03.pdf
「列車時刻表の路線図にも『まつだい』が載り、日本中の人が松代の位置を簡単に確かめられます。そんなことを思っているだけで、もはや胸は高鳴ります。その豪華な電車で松代駅に降りたら、感激で声より先に涙が出ることでしょう。北越北線の開通、心よりお祝い申し上げます。最後に、故郷松代の緑豊かな自然を思い浮かべながら、川に自然と魚が集まってくるような環境豊かな町、人も集まり繁栄する町となることを祈ります。」
そして、開業の日には町は文字通りのお祭りムードで、広報誌も大々的に特集を組んだのだ。
http://www.city.tokamachi.niigata.jp/site/kyusityousonkohoshi/page_matsudai/pdf/md_1997_04.pdf
鉄道と言うのは、このように様々な人の夢や希望を運び、「出稼のみなさんも週末には帰省できるようになる」とあるように、家族の絆を結ぶ大切な物なのだ。
そういった町の悲願を達成できたほくほく線の駅に対して、天下の鉄道アイドルが言い放った言葉が「女一人で来る所じゃねー」なのだ。
地元の方に対する冒涜行為に他ならない失礼な発言だ。

もう一つの側面から見てみよう。
このほくほく線は、全長59.5kmのうち4つの長大トンネルが存在し、いずれも難工事だった。
美佐島駅のある赤倉トンネルも例外ではなく、膨圧性地山であるためメタンガスや油の湧出、湧水に遭遇するなど、正に命がけで工事を続けたトンネルで、実際可燃性ガスの噴出による爆発事故なども何度も起きている。
文字通り、命がけの工事だったのだ。
となりの鍋立山トンネルに至っては、土圧が激しく掘っている先から押し戻されてしまい、掘り進むどころか100メートルも押し戻されるなど、土木工事史上でも類まれな難工事だった。
このことはNHKでも過去に特集している。
http://tksoft.cool.ne.jp/TechnoTreasure/page017.html

少々ケースは違うが、フジテレビ開局50周年ドラマで「黒部の太陽」というのを放送していた。
これは黒部ダムの工事に関するもので、黒部第4トンネルの難工事をドラマ化したものだ。
このドラマを見ても、トンネルと言うのはまさに命がけで工事して開通させるという事を思い知るドラマである。
ほくほく線の駅や路線がどのような経緯で、地元民のどれほどの悲願で開業したのか?
そして全身全霊で命がけで工事を続けた方々・・・
そういった様々な人の思いや、人類の英知、汗と涙、そして命をささげてまで開業したこの路線。
このようなことに思いを巡らせながら、鉄道の大切さを痛感し、そして鉄道の良さを皆さん伝えてくのが、鉄道ファン代表としてメディアに登場する鉄道アイドルの使命ではないのか?
しかし、このような経緯で出来上がった美佐島駅に行って天下の鉄道アイドル木村裕子が残したコメントは
「女一人で来る所じゃねー」
である。
鉄道が好きなのか、そうじゃないのかと言うレベルではない。
「人でなし」「人非人」「人面獣心」発言だ。
思えば木村裕子の所属するオフィス北野には変な名前のタレントが多いのだからこれを機会に「人でなしアイドル木村裕子」にでも改名したらどうだろうか?
それなら是非応援したい、まさに「名実共に」である。
ただし、二度と改札を通らないで欲しい。

この路線がどういう経緯で出来、どれほど大変な工事だったのか知っていれば、うかつにも「女一人で来る所じゃねー」などと言うことはありえないだろう。
いまどきインターネットを使えば、自宅で短時間にこういったことは調べられる。
なぜトンネルの中に駅が出来たのか?
そんなことを考えただけで自然と調べてみる物ではないだろうか?
この木村裕子の言動からいかに鉄道に興味が無く、何も調べていないのかがよく伝わってくるのだ。

ところで皆さんはトンネル工事現場に女性が入れない事をご存知だろうか?
明確に法規定があるわけではないが、昔からの言い伝えで山の神は女なので、山の中に女が入ってくると神様が怒るので事故が起きると言われている。
このシーンは「黒部の太陽」のなかでも登場するシーンだ。
もちろんこれは言い伝えであって科学的根拠など無いが、この言い伝えを基に考えれば、山の中で「女一人で来る所じゃねー」と言い放った木村裕子に対して、山の神様はさぞご立腹の事ではないだろうか?
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