浅知恵で誤報続発
「209系全部死んじゃう」事件

まず、こちらの記事をご覧いただこう。
http://www.j-cast.com/2008/02/25017088.html
この記事を要約すると、「しょこたん」こと中川 翔子がTBSの「サンデージャポン」に出演したさい、海上自衛隊のイージス艦事故についてのコメントを求められ「これは絶対に避けられるべき事故ですよね。ホントに二人とも絶対に避けられた。死ぬことを。死ななくて済んだことなのに、こんなことになるなんて。こんな寒い時期に」などと話し、視聴者からTBSに「二人は行方不明で、死んだというのはおかしい」と抗議が殺到、しょこたんが番組の最後に謝罪に至ったという事件だ。
J-CASTニュースでは放送評論家の志賀 信夫氏の言葉を次のように掲載している。
「ニュース番組などでは特に、世の中に対する無知さをはっきり示す結果になる。タレント自身が傷つくだけでなく、番組も大きなダメージを受ける自殺行為。だから、タレントを起用する場合でも、テーマに関心を持っているタレントを人選をすることが必要なんです」

全くその通りである。

しかし、一見興味がありそうな人物を採用しても、それが実は違ったというのなら同様の問題は起きてしまう。
鉄道アイドル木村裕子もこれとそっくりの問題を起こしているのだ。
そしてまさに木村裕子の鉄道に対する無知ぶりの証明となってしまったのである。
さしずめ採用した担当者は木村裕子は鉄道に詳しいとメディアが取り上げているのを鵜呑みにしてしまったがために、とんでもない自殺行為になってしまったのだろう。
時は2008年月日、テレビ神奈川製作の「カルチャー SHOwQ」という番組に出演したさいに事件は起こった。
タレントの半田 健人が「103系のような電車が好きですね。昔の山手線のような。古臭くてもモーターの音とか響くのがいい。今のあんまり揺れないし、音も静かだから電車に乗った気がしない。」と語り始めた時、鉄道アイドルの木村裕子が「そんなことないですよ!E231やE233はメチャカッコいいし、209系は来年全部死んじゃいますから!」と言い出したのである。
鉄道オタのみなさんならもうお分かりですね。前半の話は主観論なのでおいて置くとして、「209系は来年全部死んじゃいますから!」というのは完全なデタラメだ。

簡単に209系について説明しよう(鉄オタの皆さんには説明するまでも無いが)。
そもそも国鉄時代の車両は鋼鉄製の車両で、それを保守や改造しながら何十年と使っていたものだ。
中には40〜50年以上経過している車両もあった。
たしかに「物を大切にする」という精神で考えれば大変良い事なのだが、一方でそんなに古い設計の車両は、保守パーツをそろえておくのも容易ではなく、モーターやディーゼルエンジンの効率も悪くCO2排出量も大変多く、現在では規制されているアスベストが使われていたり、排ガス規制に引っかかったりと、安全やエコロジーという観点からはかえって問題が大きくなってきた。
http://n700.jp/closeup/03.html
こちらはN700系のデータだが、初代の0系と比較して電力使用量は最大で半分近くになっているというから、いかに最近の車両はエコロジーなのかわかる。
思えば209系にも「従来の半分の電力で走っている」と車端部にステッカーが貼られていた。
こういった背景からJRは10年毎に最新の車両を製造する事でより効率が良い運行とサービス向上を目指したというのが209系である。
これが簡単な209系登場の経緯だ。

しかし、実際には10年で全ての車両を廃車にするわけではない。
この時期、話題になっていたのは京浜東北線から209系が全廃するという話題である。
それを木村裕子は209系全てが廃車になると勘違いしたのである。
だが、209系を知っている人間であれば、こんな間違えをする事はありえない。
鉄オタの皆さんならご存知の通り、209系にも様々なバリエーションがある。
京浜東北線で運用していた0番台、車体の幅を広げて輸送力を増加させた500番台、地下鉄直通用の1000番台、八高線・川越線用の3000番台がある。さらに東京臨海高速鉄道の70-000系の基本設計は209系と同一であり、現在は3100番台となって八高線・川越線に投入されている。
このうち廃車になるのは京浜東北線、根岸線で運用していた0番台のみで、500番台については京葉線への転用、0番台についても「MUE-Train」という試験車両などへ一部改造し転用している。
他の形式はそのまま運用を継続する。
このように「209系は来年全部死んじゃいますから!」というのは完全なデタラメ発言である。
そしてこんなことはWikipediaやJR東日本の公式ホームページにも書かれていることだ。
さらに、検証File:006で紹介したとおり木村裕子は「鉄道ファン」を毎月欠かさず読んでいる勉強家だというが、「鉄道ファン」では一体今までに何度、209系の話題を取り上げてきたのだろうか?
以下がそのリストである。

209系0番代車
新車速報: 1993年4月号掲載
新車ガイド: 1993年5月号掲載
折込み: 1993年5月号掲載
形式図: 1993年5月号掲載
特集: 1996年4月号|JR東西通勤形電車徹底比較207VS209
2002年5月号|JR東日本の通勤電車開発史
2002年12月号|鉄道ファンを飾った車両名作選
2007年4月号|JRブランドの車両 BEST20
2008年10月号|首都圏通勤電車図鑑
2009年4月号|209系 第2章へ

209系500番代車
新車ガイド: 1999年2月号掲載
折込み: 1999年2月号掲載
形式図: 1999年2月号掲載
特集: 2002年5月号|JR東日本の通勤電車開発史
2008年10月号|首都圏通勤電車図鑑
2009年4月号|209系 第2章へ

209系1000番代車
鉄道ファン掲載情報 新車ガイド: 1999年11月号掲載
1999年12月号掲載
折込み: 1999年12月号掲載
形式図: 1999年11月号掲載
特集: 2000年2月号|地下鉄乗入れ特別仕様車
2002年5月号|JR東日本の通勤電車開発史
2008年10月号|首都圏通勤電車図鑑
2009年4月号|209系 第2章へ

209系1000番代車
鉄道ファン掲載情報 新車ガイド: 1996年5月号掲載
特集: 1996年4月号|JR東西通勤形電車徹底比較207VS209
2002年5月号|JR東日本の通勤電車開発史
2008年10月号|首都圏通勤電車図鑑
2009年4月号|209系 第2章へ

まして、鉄道ファンには「209系情報局」という特設コーナーまで準備されており、209系の情報がウォッチされているのだ。
http://railf.jp/special/209/
ここまで何度も掲載、特集しているというのなら、勉強家の木村さんはなぜ間違えたのだろうか?
これでは「勉強家」という記載が「偽装だ」と言われても反論の余地は無い。
唯一、認められる反論は「自分はよほどのバカだ」という事くらいだ。
それなら筋が通っている。
もう一つの問題も併記しておく。
これはあくまでネット上の話であり、筆者は目撃しておらず、つまり事実確認しておらず、あくまでそのネット上の話を元にした仮説であると前置きしている。
木村は2008年に小田急で毎年開催しているイベントに呼ばれている。
小田急といえば自慢の列車が「ロマンスカー」である。
展望車両に当初は連接車体という、日本の鉄道の歴史的にも忘れる事の出来ない列車だ。
そんなロマンスカーの事を鉄道アイドル木村裕子は「パノラマカー」とステージで言ったそうだ。
パノラマカーは名古屋鉄道の登録商標である。


登録商標を間違えるとはこういうことである。
・トヨタのイベントで「プリウス」を指差し、「インサイト」と発言
・auのイベントで「i-mode」と発言
・パナソニックのイベントで画面を見て「ブラビア」と発言
・ニコンのイベントで「EOS」と発言
・ペプシのイベントで「コカコーラ」と発言
これと全く同じ事である。
絶対にやってはいけないミスの一つである。

筆者の知人の広告関係の仕事をしている者に聞くと、製作現場はクライアントに気を使うのは当たり前だという。
例えばCMの撮影のさい、現場には飲み物が準備される。
言うまでも無く、クライアントに失礼の無い準備が必要である。
ある化粧品メーカーのCM撮影現場であるが・・・実はその化粧品メーカ、細々と飲料も発売しているのである。
しかし、どこに売っているか全くわからないほど細々となのだ。
それでも、スタッフはその売っているところを探し当ててわざわざ買いに行ったそうだ。
それがクライアントに対する気遣いである。
木村がこういった問題を起こすのはひとえにプロ意識の無さだ。
プロ意識があるのなら、小田急のイベントに呼ばれたのなら失礼の無い様、小田急の事を徹底的に調べておくべきだ。
「はじめに」で書いたように、鉄オタだからといって全知識があるわけではない。
しかし、仕事で呼ばれたのなら事前に調べて、実際に乗車して、ステージのネタ合せをするのが当然ではないのか?
今時wikipediaをみるだけでも相当な事がわかるし、小田急は全線乗っても東京から十分日帰りできる範囲だ。
こういった仕事に対する基本的な心構えが鉄道アイドル木村裕子には無い。

ところでこのイベントを企画製作したのは超大手広告代理店の「電通」である。
なぜそのことがわかるのか?
それは木村裕子本人が自分のブログで「電通の人と寿司を食べに行った」と自慢していたからだ。
たしかに電通が仕切るイベントに呼ばれたことは凄い。
しかしその電通が認めるだけの仕事を木村裕子はしたのか?
商標を間違えるという最大の失態を犯し、挙句はステージで歌わせれば歌詞を間違えてgdgd。
関連は分からないが翌年のイベントでは呼ばれなかったことだけは事実である。

再びJ-CASTニュースでの放送評論家の志賀 信夫氏の言葉を見てみよう。
「ニュース番組などでは特に、世の中に対する無知さをはっきり示す結果になる。タレント自身が傷つくだけでなく、番組も大きなダメージを受ける自殺行為。だから、タレントを起用する場合でも、テーマに関心を持っているタレントを人選をすることが必要なんです」
木村を取り上げるマスメディアはこの事を肝に銘じたほうがいいだろう。
もう一度いいます。
「テーマに関心を持っているタレントを人選をすることが必要なんです」
「関心があるふりをしているタレント」ではないのです、「関心を持っているタレント」なのです。
テレビ神奈川と小田急、電通は「関心があるふりをしているタレント」を採用したがためにこんな自殺行為になってしまったのである。


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